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短編集【庭球】

第56章 ぬくもりのいろ〔宍戸亮〕


亮の優しさはお世辞にもスマートではないし、わかりやすくもないけれど。
その不器用さが、こうして亮に特別扱いされているのは私だけなのだという自惚れを与えてくれる。
そして私は、他の人のどれだけ洗練されたレディーファーストよりも、どんなに面白い話よりも、やっぱり亮の優しさが嬉しいのだ。




帰る道すがら「告白されたんでしょ?」と尋ねると、亮は不思議そうな顔をして「ああ、アレか」と納得したように言った。


「長太郎にプレゼント渡してくれって頼まれたんだよ。よくあんだろ、そーいうやつ」


「そうなんだ」と言ったあと、頬が自然と緩んできて。
それを隠すように、ほう、と息を吐くと、吐いたそばから白くなった。
さっき吐いたため息は、白くならなかったのに。

さっきからずっと赤いままの亮の横顔を見て、気がついた。
今のため息はきっと、ぬくもりそのものだったのだと。
だから白く見えたのだと。


「ねえ亮、寒いね」
「だな」


幸せやぬくもりが色づいて見えるのなら、寒いのも悪くない。
そんなことを思いながら、繋いだ手にほんの少し力を込めた。


fin





◎あとがき

お読みいただき、ありがとうございました。
参加しているコミュニティ「テニプリ布教委員会」より、お題「ため息まで白い」を使って書かせていただきました。
久々の宍戸ですが、硬派でウブな彼に「愛してる」と言わせたいがために書いた俺得なだけのお話な気がしてきました…笑

話は変わって、ずいぶんご無沙汰してしまってすみません…
好きなアーティストのファン活動を久しぶりにしていたというお話は日記に書かせていただきましたが、それに燃え尽きていた感じで、こんなにも期間が空いてしまいました。
更新が止まっている間、ピックアップもしていただき、新たにしおりを挟んでいただいたり、ファン登録までしていただいた方もいらっしゃったのに、期待を裏切ってしまうような形になってしまい、すみませんでした。
今後も気まぐれ更新だとは思いますが、何とぞよろしくお願いします。

少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです。
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