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短編集【庭球】

第54章 冷たい手でもいいよ〔財前光〕


「ひか、る」
「ん」
「すき」
「ん」


俺もっすわ、という言葉とともに、強く抱きしめられた。
財前…いや光の短い髪が、首元を撫でる。
ひんやりとした小さいものは、たぶんピアスだろう。

こっち向いてや、と普段の何倍も柔らかい声で請われる。
甘い期待よりも恥ずかしさの方が大きくてゆるゆると首を横に振ると、頬に手が触れて、強引に向かい合わせられた。
その冷たさに、思わず声が出る。


「つっめた!」
「先輩が温いんすわ」
「絶対ちが…」
「ちょお黙っとってください、キスするんやから」


その言葉に、そっと触れた唇に、もうこれ以上はないと思っていたのに、また頬が熱くなったのを感じた。
私がこんなにも熱を帯びるのなら、恋人の手はこのくらい冷たくてもいいのかもしれない。

作業途中のボールがちらりと視界に入った気がしたけれど、私は二度目のキスをねだった。


fin





◎あとがき

お読みいただき、ありがとうございました。
需要があるのかどうか甚だ謎(当社比)な財前くんですが、いかがでしたでしょうか。

参加しているコミュニティ「テニプリ布教委員会」より、お題「冷たい手でもいいよ」を使わせていただきました。
財前くんは冬場は絶対学ランの下にセーターを着ていて、しかもセーターで萌え袖しているはず! という私のニッチな妄想の産物でございました。

トロいな、と言った後のヘッドホンは、つけてただけで何も聞いてないといいな。
「スーパーは遅くまでやってるし、帰り送りますからちょっと遅くなってもええやろ?」とかなんとか言ってこのまま部室で致しちゃっててもかわいいし、あるいは盛っちゃった財前くんが「やっぱこの仕事やらなきゃいけないから無理」とヒロインちゃんからダメ出しくらっててもかわいいな、なんて個人的には思ってます…!

少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです。


そしてそして、ずいぶん更新期間が空いてしまいまして、本当にごめんなさい。
その間にもしおりや拍手が増えていて、感謝感謝です。
クリスマスには、個人的にツンデレの代名詞だと思っているあのキャラのお話を書きたいと思っていますので、どうか見限らずにお付き合いいただけたらと思います。
本当はその前に一本アップしたいんですが、できるかなあ…
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