第50章 God save the King〔跡部景吾〕
思わず顔を上げると、景吾はまた私の髪を撫でて、そのまま当たり前のように唇が重なる。
壊れ物を扱うようにそっと私を抱き寄せた景吾は、耳元で続けた。
「渚のすべてが欲しい。今も、未来もな」
手の中にある指輪と、その言葉の意味を重ねてみる。
──ああ、神様。
自惚れてもいいですか?
「…もらっていいの、って聞こうとしたけど、愚問だったってこと?」
「ああ」
いかにも、欲しいものはいつも自力で手に入れてきた景吾らしいやり方だ。
ぴかぴかの指輪には、自分の顔が小さく反射して写り込んでいる。
こんなときにだけ都合よく神様を持ち上げる私に、きっと神は振り向かない。
けれど景吾には、いつも神様が味方してくれる気がする。
いや、もし敵になっても、景吾はどんな困難も乗り越えてしまうのだろう。
左手の薬指にはめてくれた景吾に口づける。
もつれるように倒れこんだ先に一瞬見えたのは、天国、かもしれない。
fin
◎あとがき
お読みいただき、ありがとうございました。
なんともベタな、手垢のつきまくったネタだったと思いますが…あ、それはいつものことですが笑、いかがでしたでしょうか。
お誕生日だから書いたというわけではなく、ふと思いついて書いていたらお誕生日がいつの間にか過ぎていたという…ちゃんと計画的にお祝いしろって話ですね。
やたらと自虐的になってしまうのは、自分が雌猫失格だという自覚があるからです、すみません笑
ただ、心の広い跡部さまなら、私のような愚か者でも鼻で笑って許していただけるのではないかと…!
そうそう、どうでもいい話ですが、私は先日初めて跡部さまの好物「ローストビーフヨークシャープディング添え」という一字一句違わぬメニューをレストランで見つけて、一人で大興奮しました。
この喜びを共有できる人が近くにいないのが本当に悲しかった…笑
タイトルは跡部さまのお好きなイギリスの国歌をもじって。
跡部さまなら神の力を借りずともなんでも実現してしまうでしょうが。
そしてめでたく、短編集50章到達。
記念すべき章が跡部さまで、わたくしめも小躍りして喜んでおります。
少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです。