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短編集【庭球】

第47章 アクアブルーで抱きしめてII〔木手永四郎〕*


言うが早いが、腰に腕が回って強く抱きしめられる。
久しぶりの人肌のあたたかさは、それだけでまた涙が出てきそうなくらいに優しくて。
これまでたくさんラケットを握ってきたのだろう筋張った手が、私のTシャツの中で暴れ回る。
それはやり場のない悔しさをぶつけるようでもあったし、それでいて常に私を気遣うようでもあった。
彼の長い指が主張し始めた頂に触れて、思わず吐息を乱すと、彼はもどかしそうに眉根を寄せて、再び私に口づけた。




「…綺麗だ、とても」


後ろから覆いかぶさってきた木手くんの声が、耳に直接吹き込まれた。
霞んできた意識の隅で見られていることを理解して、体温が一気に上がる。
それでも私の身体よりずっと熱い彼自身が押しつけられて、自分の中心があふれてしまうくらいに潤ったのがわかった。

彼の雄がみりみりと私の中を分け入ると、散々我慢していた声が口の端からこぼれ落ちる。
反射的に口元を押さえて、たった今漏れ出た声が波音に溶けてなくなってほしいと願った。
まだ最後まで入りきらない彼の大きさに、今まで通り喉の奥に押し込めておけるのだろうかとはしたない不安を膨らませながら。


「入っ、た…」


遠慮がちだった動きが、次第に内側から壊されてしまいそうな抽送へと変わる。
それまでとは比べ物にならないほどの快感が受け止めきれずに、目の前の岩を引っ掻くように指に力を込めると、爪先が擦れて削れる感覚。
普段なら痛いと思うのだろうけれど、今はその感覚さえ、甘い疼きになる。


「外だから興奮しているんですか…?」


それともいつもこんなに乱れるんですか、と重ねられた彼の問いかけは吐息がちで、「ちが、う」と切れ切れに返す声もまた、喘ぎの色が濃かった。
室内なら反芻するはずの互いの息遣いがどこまでも抜けていってしまう心許なさは、彼の言葉以上にここが屋外であることを知らせてくる。
また私の中で彼の猛りが大きくなったのを感じて呼吸が止まりそうになった瞬間、背中から荒々しく包まれる。
普段の彼の冷静さをかなぐり捨てて、激情を剥き出しにしたようなその仕草に、私は自分がまた溶かされるのを感じた。


「締めすぎ…、ですッ…」
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