第46章 アクアブルーで抱きしめてI〔木手永四郎〕
出した答えが、リゾートバイトだった。
夏休みの間、この部屋から離れられる。
どうせなら思い切り遠くへ、と沖縄を選んだ。
「一人部屋・三食つき」の条件で一番上に出てきた店に、時給もろくに確認しないまま応募した。
そして昨日、書類選考みたいなものもなく、いきなり採用のメールが来た。
「できるだけ早く来てほしい」という必死な文面は、一刻も早くここから抜け出したい私にとっては願ってもいない話だった。
かろうじて空席のあった飛行機を探して予約して「明日伺います」と返信した。
パッキングをしていたら、あっという間に今日になって、明日からはもう出勤だ。
この数日間はあっという間だった気もするし、とても長かった気もする。
いずれにせよ、頭も身体もとても疲れていた。
目を閉じると、あっという間に眠りに吸い込まれた。
ふと目が覚めて壁にかかった時計を見ると、七時過ぎを指していた。
カーテン越しの日が明るくて、まさかあのまま朝まで眠ってしまったのかと焦ったけれど、スマホを確認すると十九時台で。
そうか、沖縄は本土より日が長いのか。
ここ数日は満足に寝ていないからか眠りが深かったらしく、目覚めがすっきりしていた。
今の今まで気がつかなかったけれど、窓の外からは微かに波の音が聞こえる。
こんなに明るいなら少し海を見に行ってみようと、ベッドから起き上がった。
二分も歩けば海へ出られた。
砂浜に降りて波打ち際に近づくと、海の透明度がよくわかった。
海ってこんなに綺麗だったっけ。
水道から出てくる真水よりもずっと澄んでいる気がする。
水平線に近づいている太陽はオレンジ色に燃えているけれど、足元の波は青かった。
どこまでも透明で澄み切っているのに、とても悲しい色に見えた。
ビーチサンダルを脱いで波を蹴飛ばしてみても、その色合いは変わらなかった。
* *
翌日から仕事が始まった。
オーナーがいない間の店番と雑務。
予約や問い合わせの電話が何度も鳴った。
さすが繁忙期、なんて独りごちて、窓から外を眺める。