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短編集【庭球】

第45章 Midnight serenade〔白石蔵ノ介〕


「お酒の力借りんと言えたらよかったんやろけど…断られたとき、酔った勢いやったって言えへんと立ち直れん気して…」


途中で声がくぐもって、布団を鼻先までかぶったのだろう。
一気に呼び戻された意識で、そんなことを思った。
これは夢か、それとも現実だろうか。


「ごめんな、今さら言われたってきしょいわって話やんな…ほんま、酔っ払いの戯れ言やって思ってくれてええから」
「…酔っ払いの戯れ言なん?」
「いや、違う、けど…あー、ほんまにごめん、忘れてくれへん?」


最後の方はもう、半分涙声で。
ソファから起き上がってベッドへ近づくと、林は全身すっぽり布団にくるまって丸くなっていた。
ベッドサイドに腰かけて、頭だろうと思われる部分を布団の上からそっと撫でる。
「なあ、そんなこと言われて忘れられるわけないやろ」と声をかけたら、林がごそごそとほんの少しだけ顔を出した。


「…あかん?」
「あかんわ。嬉しすぎて一生忘れられへん」


潤んだ瞳をぱちりと見開いた林を布団ごと抱きしめながら、「俺もずっと好きやった」と吐き出した。
ようやく言えたと思っていたら、林が不安げに「…酔ってるん?」なんて言うから、「なら明日の朝、素面で言い直すか?」と笑ってやる。


「…嫌や、今がいい」


林が首を振ったのを合図に口づけた。
微かにアルコールを感じながら、それが飛んでしまうまでキスをしようと思った。


fin





◎あとがき

お読みいただき、ありがとうございました。
久々の白石、いかがでしたか。

お酒の力で…! という展開、いつか書きたいと思っていました。
男が酒の勢いで告白するのもいいけれど、女の子にやらせたいなと。
理性が強そうで、トモダチとして非常に優秀な白石を、お酒の力を借りて寄り切らせようと。

ここ最近リアルが非常に忙しく、更新に時間がかかってしまいました。
今書いているのは木手。
これまたとても長いお話になりそうなので、もしかしたらまた時間があいてしまうかも…
見限らずにお付き合いいただければ幸いです。

少しでも楽しんでいただけますように!
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