第6章 DNA〔切原赤也〕
「じゃあ渚は、直毛の遺伝子しか持ってないっつーこと? だよな?」
「そうそう」
「逆に俺は、くせ毛遺伝子が二つかもしんないし、両方一つずつかもしんないわけだ」
「そういうこと。だから赤也と私の子どもは、くせ毛になる可能性のほうが高いけど、直毛になる可能性もあるってことね」
私の髪を梳かしていた赤也の手が、急にぴたりと止まった。
どうしたんだろうと目を開けると、赤也は顔を真っ赤にして固まっていて。
私はその理由を考えて、たっぷり数秒後にようやく理解して、とても恥ずかしくなった。
なんて大胆なことを言ってしまったのだろう。
私もきっと、赤也くらい真っ赤になっているに違いない。
「…やだ、なんか、ごめん」
「俺、は、嬉しかった」
ふわ、と赤也の匂いがして、抱きしめられる。
「作ってみる? 子ども」
「えっ」
「俺は、渚とがいい」
抱きしめられたま赤也を見上げたら、視線がぶつかった。
赤也のまっすぐな目が、嬉しいけれど恥ずかしくて。
せっかく渚が誘ってくれたし、なんて言うから、もっと恥ずかしくなって下を向いた。
気づいたら軽々と抱き上げられて、もたれていたはずのベッドに寝かされていた。
見慣れない天井に、真剣な赤也の顔。
テニスのときとはまた違う、少し切ないような表情に心臓が高鳴って。
ゆっくり頷いたら、優しいキスが降ってきた。
これまでにしたキスの数を簡単に超えてしまうくらい、何度も何度も。