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短編集【庭球】

第41章 All of me〔仁王雅治〕*


遊ばれているのかもしれないと不安になるのは、自分がこれまで女にやってきたことの裏返しでもある。

自慢じゃないけれど、これまで追われる恋愛しかしたことがないし、追われているときは必ず自分に主導権があった。
詐欺師の名に賭けてバレたことはないにしろ、一応付き合っている女がいるのに別の女と寝るなんてこともざらで。

もし自分が渚の立場なら、社内に歳上の本命がいながら、言い寄ってくるちょっと顔のいい高校生とも火遊びしたくなる、気がする。
後腐れのない、ちょっとした火遊びを。

考えれば考えるほど、これまでの行いが巡り巡って自分に返ってきているんじゃないかと思ってしまう。
追う立場になって初めて過去の恋愛を省みて、真剣だったことなんて一度もなかったことに気がついたのは、つい最近のこと。

その俺が、いつだって会いたいとか、たまに会えたときには別れるのが淋しいとか、変に気を使ってしまって自分からはなかなか連絡できないとか、そんなことに悩むとは。
キャラじゃないとわかってはいるけれど、彼女のことならクローゼットの中身や下着事情まで含めてどんな些細なことでも知りたいと、本気でそう思うのだ。



「雅治?」


いつまでたっても何もしない俺を不思議に思ったのだろう、怪訝な顔が俺を覗き込んでいた。
ピヨ、と適当にごまかそうとしたら、渚は俺の下からするりと抜けだして、俺のベルトに手をかける。
面食らってされるがままになっていると、渚の手がスラックスの前を寛げて、ぶるんと飛び出した俺自身を包む。


「…先手必勝、ってね」
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