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短編集【庭球】

第41章 All of me〔仁王雅治〕*


スタイルのいい渚にはとても似合っているけれど、着慣れていないからなのか、どこか気恥ずかしそうにしていて。
コスプレでもしたときのような微妙な照れも、そして服装そのものも、どちらも男の大好物だ。



朝からこの格好で出勤した…んよな。

同僚は男の方が多いと聞いている。
商売相手である医者の大半が男だ、とも。
そいつらもきっと自分と同じように欲情したのだろうと思うと、気が気じゃない。
怒らせると一番怖いチームメイトにイリュージョンしてそいつらの視覚を奪ってやろうかと真剣に考えたけれど、まさか全員とテニスをするわけにはいかないと思い直した。
幸村ってのも意外と使えんぜよ、と心の中で毒づく。

しかも下着はTバックだった。
ああ、早く脱がせてめちゃくちゃにしてしまいたい。

さっきから何度も暴発しそうになるのを踏みとどまってきた下半身に、またじわりと熱が集まった。




ポン、とくぐもった電子音が響いて、待ちわびた箱がようやく降りてきたことを知らせてきた。
「一階です」なんてわかりきったことをご丁寧に説明してくれるエレベーターへ自分から先に乗り込むと、一歩後ろからコツコツとヒールの音がついてくる。

行き先階のボタンへと迷いなく伸ばされた渚の華奢な手を後ろから取って、ドアを閉めるボタンへと強引に誘導したあと、自分の方へ引き寄せた。
きゃ、と小さく叫びながらバランスを崩した渚が俺の胸へ倒れ込んできたのを、逃すまいとそのまま閉じ込める。
その衝撃で、密室になったエレベーターが少し揺れた。

氷帝の部室にシャワーブースがあってよかったと、頭の隅で俺は跡部に感謝した。
さすがに試合帰りのドロドロの身体でこんなことはできない。
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