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短編集【庭球】

第33章 Bittersweet〔仁王雅治〕


「…信じて、いいわけ?」
「おう。信じてもらうためなら、何でもするぜよ」
「そう…なら、少しずつ、ね」


たぶん、嘘じゃない。
そう告げた自分の直感に、賭けてみることにした。
もしこれが詐欺だったとしたら、そのときは仕方がない。
早かれ遅かれ終わる運命なのだと思うしかないし、それでもいいと思えた。


「ちなみに、だけど」
「ん?」
「受験なんてしないからね、私」
「ん、センター受けたらしいって噂じゃったが…」
「ああ、受けたのは受けたんだけど。成績次第で国立大受けようかと思ってたんだけど、イマイチでね、やっぱりやめたの」
「……ほーか、焦ることなかったっちゅうことか」


あからさまに気が抜けたような声の仁王に、笑いながら畳み掛ける。


「なら、さっきの取り消す?」
「いんや、そんなわけなかろ」
「詐欺師の名は返上ね」
「ちょっと癪じゃが…お前が手に入るなら、称号なんぞいくらでも捨てちゃるき」


言い終わらないうちに、その腕の中に閉じ込められる。

来年は甘いのが苦手な仁王でも食べられる、ビターなチョコレートを贈ろう。
きっと一緒にいられるはずだ、来年も、その先も。


未来に想いを馳せていたら、ちょっぴり詰めの甘い詐欺師から、とびきり優しいキスが降ってきた。


fin





◎あとがき

お読みいただき、ありがとうございました。
私らしくないお話がここのところ二作続いたので、原点回帰といいますか、いろいろ考え込む系のヒロインちゃんにしてみました。
久々の仁王夢、いかがでしたか?

好きと言わせるためにいろんな女の子を抱いて気を引こうとする仁王。
それ間違った方向に頑張りすぎだよ、ってね。

クリスマスにアップした木手夢が裏だったので、今回は全年齢OKのものにしようと思って頑張りました。
行為そのものは描写してないので、その、許していただければ…ごにょごにょ。

バレンタインは一週間先ですが、まあこういった季節モノは先取りするが吉かな、ということでアップしちゃいます。
少しでも楽しんでいただければ幸いです。
みなさま、素敵なバレンタインを!
そして受験生のかたがた、お身体気をつけて頑張ってください。
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