第33章 Bittersweet〔仁王雅治〕
常勝・立海大附属のレギュラーで、眉目秀麗、成績優秀とくれば、抱かれたいと願う女の子は星の数ほどいるらしい。
彼女という立場を与えられる子もいればそうでない子もいたけれど、いずれにせよその大半は使い捨てられる運命にあって、振られた女の子たちによる噂という名の仁王への恨み言を、私は嫌になるほど耳にしてきた。
普通の男ならとっくの昔に刺されているだろうところを、いまだに飄々と生きて言い寄られ続けているのは、詐欺師ゆえだろう。
さすがと言うべきか、やはりと言うべきかは別として。
そんな仁王の隣にいるために私が出した答えは、永遠の二番手でいることだった。
もしも仮に彼女と呼ばれるポジションになってしまったら、私は仁王を独占したいと願ってしまうだろうから。
けれどそれがおそらく不可能だということも、その状態がとてもつらいだろうということも、知っているから。
そして、私が願えば願うだけ、その関係が終わりに近づいていくということも、私は知っていた。
だから、ときどきこうして会って身体を重ねるこの関係が、最良で唯一の選択肢なのだ。
本来ならそこから脱却するために、この日とチョコレートを利用するべきなのだろうけれど。
チョコレートとともに本当の気持ちを伝えて、面倒くさい女だと思われるのはどうしても嫌だった。
この男が重いと感じたらすぐに身を引くということは、痛いほどに理解していたから。
でも、さもついでのように軽く渡してしまうのも、自分を安売りしている気がして嫌だった。
なんてちっぽけなプライドだろう、それもとてもつまらない。