第32章 記憶の中で君を抱く〔越前リョーマ〕*
「もっとちゃんと触った方が気持ちいいんじゃないの? ほら」
「あぁうっ、だ、めえ!」
自分の手を私のそれに添えてぐりぐりと動かすリョーマに半分泣きながら抗議したけれど、まるで聞き届けられない。
刺激が強すぎて、感覚が焼き切れてしまいそう。
私が叫ぶように名前を呼ぶと、リョーマは空いている方の手で、どろどろに蕩けきった入り口を穿った。
「やっ、だ、もうッ…リョーマぁあっ!」
彼の指がちぎれてしまうんじゃないかと心配になるほど強く締めつけて、私は絶頂を迎えた。
肩で息をしながらリョーマを見やると、にやりとしか形容できない笑顔で「すっご」と呟いた。
指がずるりと音を立てて抜ける。
その後を追うように、私の中からはまた新たに涙が溢れた。
「ねえ、前に言わなかったっけ」
ベルトを外して、もうはち切れそうなジーンズを寛げながら、リョーマが言う。
何を、と視線だけで問いかけると、リョーマはほんの少し顔を歪めて、何の合図もなしに私の中に入ってきた。
「ひゃうっ、んっ! いき、なり…ッ」
「試合前、は…禁欲生活だ、って」
達したばかりの敏感な、そして疲れ切った身体に、これでもかというほど強く激しく打ち込まれる。
それを離すまいと奥へ奥へと誘い込む私の内側は、何よりも雄弁で。
熱い呼吸の隙間、途切れ途切れに「禁欲してんのに、あんなの、見せられて…我慢なんか、できるわけ、ないじゃん」と私を責めるリョーマは、半端に乱されたシャツと少し汗ばんだ胸板がどうしようもなく煽情的で、私はもうそれだけで達してしまいそうだ。
「あ…やっ、ば」
ラストスパートとばかりにがむしゃらさを増した動きに、身体が内側からばらばらと壊れてしまいそうになる。
ああもういっそ壊れてしまえばいい、壊してほしい。
ばらばらになった私の欠片をひとつひとつ拾い集めて、組み立てて。
そしてまたこうやって愛して、壊して。
支離滅裂で言葉にならない言葉を落ちてきたキスに溶かして、身体を震わせた。
リョーマ、と名前を呼んだのを最後に、意識が途絶えた。