第32章 記憶の中で君を抱く〔越前リョーマ〕*
「やっぱ、持つべきものはリッチな知り合いだね」
「え…?」
「跡部サンがプライベートジェット出してくれたんだよね、ダメもとで頼んでみて大正解」
こんなやらしい渚見れるなんて、思ってなかったもん。
リョーマは、自分と同じく世界を転戦するテニスプレイヤーの名前を出して、低く笑った。
ウルトラCの種明かしに唖然とする私に、ゆっくりキスを落として。
待ち焦がれていた温もりに浸ったのもつかの間、リョーマはとんでもないことを言い出した。
「続き、してよ」
「へっ?」
「さっきの続き。一人でやらしいことしてたんでしょ」
「…や、だ」
「拒否権あると思ってんの? 勝手に人の枕オカズにしてたくせに」
「そんな、こと…」
「あるでしょ。それに先に一人だけ気持ちよくなるとか、ずるいから。俺は渚とするために我慢してたんだけど?」
「ぐ…」
「ほら、して見せて」
私が耳もとで囁かれるのにすこぶる弱いのを知っていて、わざと吐息混じりに命令する抜け目のなさは、きっとテニスでも余すところなく発揮されているに違いない。
図星を突かれて申し開きもできない私は泣く泣く指示に従うけれど、心のどこか奥底でそれを覚悟して、また期待していたような気もして、ああ、私はなんていやらしいのだろう。
「ほんと、見ないで…」
「無理」
「うう…ああッ、ん!」
中途半端に脱ぎかけていたパジャマも下着も、すべて剥ぎ取られて。
大きく脚を開かされて、リョーマの視線を痛いほどに感じて。
一番見られたくないものを見られている羞恥で、私の中心は壊れたように蜜を垂れ流している。
その核を指でそっとかすめたら、漏れた声は獣じみていた。