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短編集【庭球】

第31章 健全異性交遊のすゝめ〔宍戸亮〕


林がふわって笑って、唇に目がいった。
さっきなんとも思わなかったのは唇噛んでたからだって気づいて、もうなんなんだよ、かわいすぎるだろ。

髪をばさばさかき混ぜてみたり、テニスバッグを背負い直したりして、どうにか照れてんのを誤魔化そうと思うけど、たぶんそんなんじゃ全然隠せてねえんだろうな。


「…バーガーでも食ってくか、渚」


こうなったらやけくそだって感覚になって、俺から手を繋いだ。
林…いや渚の手がひんやりしてる気がするのは、俺が火照ってるからなのかもしれない。

信じられないみたいな目で繋がった手を見てた渚が、嬉しそうに笑って頷いたのを見て、思い切って関係を壊す勇気もたまには必要なんだなって思った。






バーガー食ったあと、渚が制服のポケットから小さいチューブみたいなのを出して、唇に塗り始めた。
何してんだって思いながら隣で見てたら、例のぷるぷるで悩ましい唇になってて。


「…それ、何だ?」
「これ? グロスっていうんだけど」
「前からそんなん塗ってたか?」
「んーん、最近。メイクとか詳しくなかったから、友達に教えてもらったりして頑張ったんだけど…これからテニスも勉強しようと思ってて…ほら、亮と釣り合ってないんじゃないかって、自信なくって」


尻すぼみにそう言いながら顔を真っ赤にする渚を見てたら、そのまま押し倒しちまいたいって思った自分に気づいて。
「んなことねえよ」って言いながら、悩みって尽きねえもんだなって思った。


fin






◎あとがき

お読みいただき、ありがとうございました!
初めて続きモノを書いてみました、いかがでしたか?

前作を書いたあと、宍戸の硬派な童貞感はなんともイジり甲斐があるぞと目覚めてしまい、いつか続きを書きたいなあと目論んでおりました。
なんとか形にできてよかったです。
かっこいい宍戸さんとは程遠いですが、非常に中学生らしく人間らしく健全で、これはこれでいいんじゃないかなと思ってます。
チョタはかわいそうな役回りになってしまいましたが、次の日に宍戸がバーガーを奢って仲直りすることでしょう笑

少しでも楽しんでいただければ幸いです。
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