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短編集【庭球】

第31章 健全異性交遊のすゝめ〔宍戸亮〕


*第27章「片想いラプソディ」続編
*こちら単独で読んでいただいても問題ありませんが、前編をお読みいただくと更に楽しめるかと思います(P147〜152)






悩みが、ある。
彼女が急に綺麗になった、気がする。


付き合うことになったのが、かれこれ二か月近く前。
俺が林の変化に気づいたのは、自慢じゃねえけど二日前。



自分で言うのも変だけど、俺は男兄弟しかいねえし、女子特有のそういうことに疎い方だっていう自覚もある。
そんな俺でさえ気づくんだから、やっぱり忍足とか滝みたいなオンナゴコロがわかってる風情のヤツらは、もっと前から敏感に感じ取ってたんだろうと思う。
どこがどう変わったんだって聞かれたら答えに詰まる俺とは違って、きっとすらすらいくつも答えが出てくるんだろうな、とも。

──なんかムカつく。

俺より先に気づいてただろうヤツらと、鈍感な俺自身が。
いや、今さらムカつくなんて都合よすぎだよなってわかっちゃいるんだけど。

ジローが昨日「最近渚ちゃん、可愛くなったよねー」とかなんとかこれ見よがしに言ってきやがって、ジローにまで負けた気がして、そのダメージも地味に効いてる。




はあ、とため息が出て、我ながら辛気くせえなって思ってたら、横から突然にゅっと林が顔を出して「どしたの、らしくないじゃん」って笑った。
驚いたのより先に嬉しくて心臓が揺れてんのに「ん、おう…そうか?」なんて微妙な生返事しか出てこなくて、自分のボキャブラリーのなさにうんざりする。


肌は前から綺麗だと思ってたけど、こんなにだったか?
リップクリームでもつけてんのか、唇なんてつやつやで、なんかぷるぷるしてて。
触ったら絶対柔らかいんだろうなとか、そのまま食っちまいたいとか、ああもう忍足でもあるまいし、変態みてえじゃん、俺。
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