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短編集【庭球】

第30章 背信ペットの処遇について〔幸村精市〕


週明け、登校するや否やクラスメイトに「短くなったね」「どうしたの、失恋?」なんて取り囲まれた。
「美容院行ったら急にそんな気分になっちゃって」と言い訳をしているとき、幸村がクラスに入ってきて。

私の髪を見た幸村の顔から、表情が消えた。
まっすぐ私の机に歩いてきたその人に、クラスメイトたちは自然と退いて道を開けた。
ただならぬ空気に身体がこわばった私の腕を、幸村はゆっくり、でも力強く掴んで。
そのまま連行されたのは、屋上庭園だった。


「どうしてくれるの? お前の髪は俺の貴重な癒しだったのに」
「切りたくなったから切ったの、悪い?」
「悪いよ、俺が気に入ってたんだから」
「いいじゃん、別に。意外と似合ってるでしょ?」
「そういう問題じゃないよ」
「じゃあどういう問題? 幸村には関係ないでしょ」


私がそう吐き捨てると、幸村はふと口をつぐんで、それからきゅっと目を細めた。
纏っているのは殺気に限りなく近いもので、私の背中を嫌な汗が伝った。
腕は解放されたのに、それ以上の圧迫感があった。


「好きな男に『ショートカットの子が好き』って言われたとか?」
「…だったら何?」
「それは聞き捨てならないな」


なに、それ。
私のことなんてバカな犬としか思っていないくせに、自分への忠誠を強要するなんて。

「神の子」と崇められているからって、そんなの理不尽すぎる。
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