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短編集【庭球】

第29章 時計じかけの愛〔手塚国光〕


手を握ったままソファから立ち上がった国光に引っ張られるように立ち上がる。
私を待っていたのは、十年間待ち望んでも叶わなかった、大きな温もり。
涙が勝手に溢れ出して、止まらなくなる。


「待ち、くたびれた…国光の、バカ」
「すまない」
「バカ、バカ…どれだけ、待ったと思ってるの、ほんと…バカ」
「…甘んじて受ける。だからもう少し、こうしていてくれ」


十年前のあの日で止まっていた時計が、再び動き出した。
奇跡でも偶然でもなくて、それが私たちの必然だったのだと。
今はそう、思える。


大和先生から「無事産まれました、女の子です」という電話を受けても、私たちは離れていた時間を取り戻すように抱きしめ合っていた。


fin





◎あとがき

お読みいただき、ありがとうございました!
久々の手塚、いかがでしたか。
やっぱりテニスを絡めないと手塚が書けない私。
絶望的に進歩がない笑

「十年後の王子様」の公式設定に基づいて、かなり妄想をこねくり回しました。
イメージとしては、12月30日、あるいは31日の設定。
そんな日でもヒロインちゃんを学校に引きずり出すためには絶対新人じゃなきゃダメだということで、無理やり大学院卒ということにして…
大和部長を顧問にしたのは、手塚がドイツに行く決心をさせてもらったことで恩を感じてそうだから。
「お願いだから来て」って言われたとき、大和部長の頼みなら、いくら忙しくても断らないんじゃないかと思ったからです。
ちなみに大和先生は絶対古典の先生だと思う!

少しでも楽しんでいただけたら幸いです。
「復活愛」とのリクエストをくださったなつこさま、ありがとうございました!
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