第28章 恋人はサンタクロース?〔木手永四郎〕*
熱いシャワーを浴びたあと、永四郎はいつものように、私の髪をドライヤーで乾かしてくれる。
温かい風と髪を梳く手が心地よくて、覚めたはずだったけれどやっぱりアルコールが残っているのか、ついうとうとしてしまって。
髪を乾かし終えた永四郎が少し離れたことに、気がつかなかった。
ふと手を取られて、ひんやりと冷たい感覚。
重たいまぶたをゆっくりと開けて、その正体を確認する。
「え…?」
「これをしておけば、少しは男避けになるんじゃないですか」
右手の小指に、華奢なゴールドの指輪。
個性的だけれどシンプルなピンキーリングは、誂えたようにぴったりで。
アクセサリーをプレゼントされるなんて初めてで、それも指輪で、しかも相手が永四郎だなんて。
眠気なんて忘れてしまうくらい、嬉しすぎて、うまく言葉が出てこない。
「本当はクリスマス当日に渡すつもりでしたから、少し早いですがね」
「…ありがとう、嬉しい」
ずっと大切にするね、と永四郎を見上げると珍しく赤くなっていて、それもまた嬉しかった。
視線をすっと下げた永四郎につられて、何を見ているのかとその視線の先を探すと、私の左手で。
永四郎はそのままゆっくり左手を取って、薬指の爪にとんとん、と優しく触れて。
そしてそっと口づけた。
「……何年後かには、この指に本物を渡しますから」
待ってる、と頷くと、永四郎は「合コンなんか行かずにちゃんと待っててくださいよ」なんて言うから、二人して笑った。
もちろん、もう二度と行かずに、大人しく待ってるから。
だからちゃんと、迎えに来てね、永四郎。
fin
◎あとがき
お読みくださいまして、ありがとうございました!
初木手、しかも久々の裏、いかがでしたか。
絶対にクリスマス前に上げたい! と必死に頑張りましたが、結局クリスマスイブぎりぎりになってしまうという…忙しかったとはいえ、なんとも意志薄弱な自分にうんざりします。
ちなみにこれ、最初は財前夢として書いていたものでした。
それが「やっぱり木手のほうがうまく書けるのでは…」と迷いが出てしまい。
まあ結果として木手でよかったんじゃないかな、とは思っていますが、財前くんには可哀想なことをしました。
ごめんね財前、今度君の夢も書くからね(書けたら)。
少しでも楽しんでいただけたら幸いです。
みなさま、メリークリスマス!