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短編集【庭球】

第28章 恋人はサンタクロース?〔木手永四郎〕*


私の合コンに関する知識なんて、いわゆる「当たり外れ」があるらしいということと、男の人はたいていお持ち帰りを狙っているらしいということくらいのものだったけれど。

今日が「大当たり」で、それがおそらくめったにないものなのだということは、隣に座った玲子のテンションの高さで理解した。
確かに、他大のサークル仲間だという五人の男の子たちはみんな、イケメンの部類に入りそうだった。


「へえ、渚チャンってかわいい名前だなあ」


ひとまず乾杯をしたあと、余計なことを言わないように極力当たり障りのない自己紹介をすると、右斜め向かいに座った男の子が笑って言った。
返答に困って、貼りつけていた営業スマイルがずいぶん曖昧になったのが、自分でもわかった。

合コンというのは、どうしてここまで居心地が悪いのだろう。

千石、と名乗った彼から視線をゆっくり剥がして腕時計に目をやると、一時間はとうに過ぎたんじゃないかというほど体力を消耗したのに、まだ十五分しか経っていなくて。
まだ先は長いのか、と喉元まで出かかったため息を、モスコミュールで流し込んだ。




「今年のクリスマスは諦めてたんだけどさ、直前にこーんなかわいいコと出会えるなんて、しかも隣になれるなんて、俺ってほんとにラッキー!」
「やだなー、そんな褒めても何も出ませんよー」


幹事の玲子が「じゃ、このへんで」と切り出したとき、やっと終わったと思ったら単なる席替えで、今度こそ出てきかけたため息を我慢するのに苦労した。
くじを引いたら千石くんの隣になって、そこからはいわゆるロックオン状態。
こんなに露骨にペアができるものなのかと思うほど、他のメンバーも各々狙いを定めた人同士で話し込んでいる。
気まずさからずいぶんお酒が進んでしまって、三杯目のジンバックはもう空になりそうだ。


「お酒、なんか頼む?」
「あ、じゃあ同じのを…」
「それジンバックだったよね、了解〜」


手際よく自分の注文と一緒に私のオーダーを通してくれた千石くんが、ふと私の手に触れた。
事故かと一瞬思ったけれど、そのまま指が少し絡んだのは間違いなく彼の意思によるもので。

女の子顔負けに綺麗に整えられた爪、永四郎のそれとは違う感触の指。
え、と声にならない声が出る。

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