• テキストサイズ

短編集【庭球】

第27章 片想いラプソディ〔宍戸亮〕


「…なあ、こんなこと、誰にでもすんのか?」
「え?」
「忠告しといてやるけど、男は勘違いすんぞ」


俺みたいに、とは言えなかった。


「気のないやつには、しない方がいいと思うぜ」


だからあんま誘惑しないでくれよ、無意識なんだろうけど。
小っ恥ずかしくて顔見れなくなっちまう。

そんなことを思っていたら、ゆっくり林の手が離れていった。
自分から突き放したくせにそれが淋しくて、矛盾だらけで、ああもう今日の俺はマジで激ダサだ。
俺がはあ、とため息を吐くのと同時に、林がすう、と息を吸ったのが聞こえた。


「宍戸のバカ!」
「うッわ!」


林が信じられないくらいデカい声で怒鳴って、俺はその声のデカさにびびった。
たぶん身体が少し跳ねたんだと思う。
缶の中でサイダーがちゃぷん、と音を立てた。

結構離れたところの人が何事かと俺たちを見てて、すげえ恥ずかしい。


「おまッ、声デカい…」
「あ…」


ワンテンポ遅れて林がきょろきょろ周りを見回して、顔を真っ赤にしてうつむいた。
そして、今度は消えちまいそうな声で。


「だって、宍戸が…」
「ああ?」
「好きでもない人と間接キスなんて、するわけないじゃん…いい加減気づいてよ、バカ」
/ 538ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp