第27章 片想いラプソディ〔宍戸亮〕
「…なあ、こんなこと、誰にでもすんのか?」
「え?」
「忠告しといてやるけど、男は勘違いすんぞ」
俺みたいに、とは言えなかった。
「気のないやつには、しない方がいいと思うぜ」
だからあんま誘惑しないでくれよ、無意識なんだろうけど。
小っ恥ずかしくて顔見れなくなっちまう。
そんなことを思っていたら、ゆっくり林の手が離れていった。
自分から突き放したくせにそれが淋しくて、矛盾だらけで、ああもう今日の俺はマジで激ダサだ。
俺がはあ、とため息を吐くのと同時に、林がすう、と息を吸ったのが聞こえた。
「宍戸のバカ!」
「うッわ!」
林が信じられないくらいデカい声で怒鳴って、俺はその声のデカさにびびった。
たぶん身体が少し跳ねたんだと思う。
缶の中でサイダーがちゃぷん、と音を立てた。
結構離れたところの人が何事かと俺たちを見てて、すげえ恥ずかしい。
「おまッ、声デカい…」
「あ…」
ワンテンポ遅れて林がきょろきょろ周りを見回して、顔を真っ赤にしてうつむいた。
そして、今度は消えちまいそうな声で。
「だって、宍戸が…」
「ああ?」
「好きでもない人と間接キスなんて、するわけないじゃん…いい加減気づいてよ、バカ」