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短編集【庭球】

第27章 片想いラプソディ〔宍戸亮〕


つーかこれっていわゆる放課後デートなんじゃねえのか、と気づいたのは、駅に近いボウリング場で二ゲーム目を始めようとしたときだった。
一ゲーム目はそこそこいい点数だったのに、意識した途端に調子が狂っちまって、いつ以来か思い出せないガーターまで記録して、林にいい加減笑われた。

林は試験期間中よっぽどストレスがたまっていたのかガンガン倒してて、自己ベストを更新したらしい。
点数はなんとか俺の方が上だったけど。


散々だな、とため息をつきながら貸し靴を返却してたら、林がフロアの端の方にあったビリヤードの台を見て「好きって言ってたよね? 私もやってみたい」なんて言い出して。
今日の調子だとかっこいいところは見せられねえなって気がしたけど、もう少し一緒にいられると思ったらやっぱり嬉しくて、OKした。



構え方やルールを一通り教えると、スポーツの得意な林はすぐ吸収して「ボウリングじゃ勝てないから、ビリヤードは宍戸に勝てるように練習する」なんて宣言してきた。
なかなかサマになってるフォームを見てたら普通に抜かれそうな気がしてくるけど、「難しいー」とか「やだ、外した!」とか言いながら一生懸命練習しているのは微笑ましい。

俺は自販機でサイダーとカフェオレを買って、カフェオレを林に手渡した。
林がたまに飲んでる、甘いやつ。



台の近くの椅子に並んで座る。
サイダーのプルタブを開けて、喉に流し込んだ。
キンキンに冷えていて美味い。
ぷは、と息継ぎをしたら「それ、私も飲みたい」なんて声がして、俺の手ごと、サイダーの缶が奪われた。


缶の上で重なった手。
細くて華奢な指。
「スポーツしたらやっぱ炭酸だね、おいしーい」と、濡れた唇が言った。

間接、キス。


身体中の血液が逆流したんじゃねえかと思うくらい、全身が熱くなった。
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