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短編集【庭球】

第27章 片想いラプソディ〔宍戸亮〕


林とは三年間クラスが同じの、いわゆる腐れ縁ってやつで。

男兄弟に挟まれた林は、氷帝に多いお嬢様タイプじゃなくてノリが合ったから、教室では自然と一緒にいるようになって。
気づいたときには、きっともう好きだった。

でもデートとか告白とかそういうタイミングはついぞ見つけられなかったし、惚れた腫れたの勢いであれこれするには時間が経ちすぎてしまった。
今さらこの関係から踏み出す勇気も持ち合わせていないし、この関係にヒビを入れることも自分が傷つくことも怖い俺は、こうやって毎日、くだらない世間話をすることしかできない。



林が飽きもせずモテたいモテたいと繰り返すから「ちゃんとモテてるっつーの、俺に」と言ってやろうかと思ったけど、やっぱり言えなかった。
今までいろんなやつのことを激ダサって散々バカにしてきたけど、全然人のこと言えねえわ。


なあ、変顔してぶーたれてるけど、ちゃんと人気あんだぞ。
G組で人気あるアイツも、窓際の席に座ってるアイツも、ついでにバスケ部のエースも、みんなお前のこと狙ってんだからな。

ま、知らねえだろうけど。
教えてやるつもりもさらさらないけど。

一番の男友達として信頼してくれてんだろうけど、それだけは言えない。
ずるくてごめんな。
お前が他の男と付き合うのとか、絶対見たくねえから。



いつの間にか戻ってきたジローは昼飯に手をつけずに、席に着くなりそのままぱたりと寝た。
別にそれは珍しいことでもなんでもないけど、寝顔が全然気持ちよさそうじゃなかったから、疲れたんだなと思った。
さっきの子、よっぽど泣いて食い下がったんだろうか。

林も、そのジローの寝顔を見たらさすがに「モテたい」とは言いにくくなったらしくて、話題は明日から始まる定期テストに移った。
平和的に断るのも大変だ、みたいな趣旨のことを前に忍足が言ってたのを思い返して、少しジローに同情した。
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