第26章 恋文〔柳蓮二〕
今、死んでしまいたい…か。
死によって時間を止めるなんて、肉を切らせて骨を断つ、なんだか悲壮な覚悟のこもった歌だ。
参考書には「幸せの絶頂を素直に表現したほほえましい歌」なんて解説が載っているけれど、ずいぶん的外れだと思う。
永遠を願うからこその、究極の刹那主義。
なんて皮肉だろう。
てっぺんにたどり着いたらあとは落ちていくだけで、それは惨めで悲しくて耐えられないから、いっそここから身を投げて死んでしまった方がましだなんて。
それこそ悠久の昔から、人は永遠を願い、そのたびに破れてきたのだろう。
とても──、とても、哀しい歌。
「ねえ、蓮二」
「ん? どうした」
「…蓮二もいつか、離れていっちゃうの?」
毎朝太陽が昇るように、なんとなくずっと変わらずに一緒にいられると思っていたけれど。
私と蓮二もいつか、気持ちが離れてしまう日が来るのだろうか。
永遠なんて、ありえないのだろうか。
「俺はずっとそばにいたいと言ったはずだ。…忘れたか?」
ペンを机に置いた蓮二が、その長い腕で私を包む。
もちろん、蓮二が想いを告げてくれたあの日の言葉を、忘れるわけがない。
ううん、と首を横に振ると「それならいい」と穏やかな声が降ってきた。
「互いに想い合っていれば、永遠というのも、できないことではないだろう?」
私の心を読んだかのように、蓮二が「永遠」という言葉を使ったことに驚いて顔を上げたら、そのまま唇が重なった。
ああ、この人となら、きっと永遠を実現できる。
そう確信したから、ゆっくりと唇が離れていく間際、そこに直接「ありがと」と囁いた。