第22章 愛より青し〔丸井ブン太〕
昼休みの終わりを告げる予鈴が鳴っても、私はしばらく泣き続けて。
ブン太はなかなか泣き止まない私を、ずっと抱きしめていてくれた。
ようやく涙が止まった頃には、二人して午後の授業をサボることが自動的に決定していた。
食べ損ねたお弁当を広げて、ブン太といろんな話をした。
仁王くんと私が手を繋いで屋上に行ったようだとジャッカルに吹き込まれて、ブン太はテニスコートから屋上まで走ってきたらしい。
実際は、仁王くんに引きずられるように屋上まで連れてこられたというのが正しいのだけれど。
「間に合ってよかったぜぃ」
「何が?」
「何って、お前らキスしそうな雰囲気だったじゃねーか」
「きっ!? しないよ!」
「ほんとかよぃ」
「ほんとだよ! されそうになったけど、やっぱ嫌だって思って」
「なんで?」
「なんでって…ブン太じゃない、から…?」
自分で言って恥ずかしくなったけれど、驚いたからなのかガムをぱちんと割ったブン太の顔が真っ赤で、きっと私より赤いだろうと思った。
「それ、反則だろぃ」なんて言葉と一緒に初めてのキスが降ってきて、また抱きしめられる。
ブン太の腕の中は暖かくて心地よくて、懐かしかった。
仁王くんのそばにいたときには暴走ばかりしていた心臓がとても静かで、やっぱり私はブン太じゃなきゃだめなんだな、なんて思った。
「もう離れていかないでよね」と言ったら「んなわけねーだろぃ」と絡められていた腕がさらにきつくなって。
「死ぬまで離してやんねーよ」と言ったブン太が、小さくガムを膨らませる。
きっと私の唇も青りんごの味になっていくのだろうと、これからの二人に思いを馳せたら、自然と笑いが溢れた。
fin
◎あとがき
お読みいただき、ありがとうございました!
ずいぶん前から予告していたブン太夢、ようやく、書き上げることができました。
アウトラインはかなり前からできていたのに、もう遅々として筆が進みませんで。
ブン太夢というより、半分以上仁王夢なんじゃないかと思いつつ。
個人的にこだわって書いたのは、ヒロインちゃんに自分を拒否する余地を与えてあげる仁王のさりげない優しさですし。笑
仁王と付き合った方が絶対いいよなと思いながら書いてしまったのが、筆が乗らなかった一因であることは間違いないと思います。ブン太ごめん。
少しでも楽しんでいただけたら幸いです!