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短編集【庭球】

第19章 ドクター、こっちを向いて〔忍足侑士〕


「もう…! 侑士のバカ!」
「バカはあかんて、関西人にはアホやっちゅーねん」
「どっちでもいいもん! バカ! アホ!」
「そんくらい心配してくれたっちゅーことやろ?」
「してない! するわけないじゃん!」
「ほんま? それはそれで傷つくねんけど」
「……嘘、心配した。産婦人科医とか言ったら嫌だなって思ってた」
「想像力豊かやなあ」


侑士は笑いを噛み殺しながら、また私の髪を撫でた。


「さっきの、本当? あの…整形外科医の話」
「ほんまやで」
「今決めたんじゃなくて?」
「ちゃうわ。中学んときから考えとってん」
「…そっか」
「せやで、心配することなんか何もあらへんの。せやから機嫌も体調も、ちゃんとなおしなさい」


私の勝手な不安を全部飲み込んでくれて、こんな私でも変わらず愛し続けてくれる侑士は、やっぱり悔しくなるくらい、どこまでも完璧だ。


「…隣で寝てくんなきゃやだ」
「しゃあないなあ。ほんま、わがままな姫さんやで」
「そこが好き、でしょ?」
「ようわかってるやん」


侑士がごそごそとベッドに入ってきて、スプリングがぎい、ときしんだ。
一気に狭くなったのにさっきより居心地がいいのは、二人の愛が同じ大きさだからだって思ってもいいよね?

そう問いかける前に、私は侑士の腕の中で、今度こそ眠りについた。


fin






◎あとがき

お読みくださいまして、ありがとうございました。

途中からめちゃめちゃ苦労した侑士、いかがでしたか。
どこらへんで筆が止まったのかは、ご想像にお任せします!笑

それにしても侑士が医者ってやばいですよね、いくら整形外科医でもやばいですよね…
私的には謙也が内科医やってるのもかなりオイシイんですけど!笑

そしてまた懲りずに、うじうじと後ろ向きに考え込む系のヒロインちゃんを書いてしまいました…進歩のない作者だと罵ってください。笑
もっと彼ら目線の話も書いてみたいなあと思ってはいるんですが、アイデアとして浮かんでくるのはヒロイン目線の話ばかりなもので…ああ、こういうところが進歩がないって言うんですよねわかります。
次こそは…! といいつつ、執筆途中の丸井夢も暗いヒロインちゃんになる予定です、またかよ。
ぜひ、あまり期待せずにお待ちください。
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