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短編集【庭球】

第18章 ホットミルク〔不二周助〕


満面の笑みでそう言った渚に、もしかして本当にそうなのかもしれないと思った。

優しくて甘くてあたたかくて、どこか懐かしくて。
渚みたいだなって、それは前から感じていたことだったから。


「…あ、信じてくれたの?」
「うーん、そうだなあ。半分は信じた、かな」
「むー、百パーセントじゃないのかー」


ころころと笑いながら「仕方ないから教えてあげる」と渚は言った。


「本当はね、メープルシロップを少しだけ入れてるの」
「ああ、なるほどね。この後味はメープルシロップか、思いつかなかったなあ」
「納得?」
「うん、納得」
「あ、でも愛もちゃんと入ってるからね?」
「うん、知ってるよ」


人肌くらいまでぬるくなったカップの中身をごくんと飲み干して、テーブルに置く。
だから、いつもありがとう。
耳元でそう囁くと、顔を真っ赤にしてうつむいて。


「僕からの愛も、受け取ってくれるよね?」


わざと少しだけ音を立てて、そのまま耳に唇を寄せる。
渚からは、観念したような吐息が漏れた。
その吐息も、呼吸さえも自分のものにしたくて、わずかに開かれた唇に吸いついた。

それはホットミルクよりも甘くあたたかく、僕を痺れさせる魔法。


fin




◎あとがき

お読みいただき、ありがとうございました。

初不二くん、いかがでしたか。
もう十ウン年も前にテニプリを読みだして初めて好きになったのが不二くんだったので、私の中ではなんというのか、神聖不可侵な人です。
その愛ゆえなのか、なかなか書けずにいたのですが…
なぜかふとホットミルクというワードが思いついて、それなら不二くんだよね! と、短編らしい短編を、勢いで書き殴ってしまいました。
たまには、こんなのもいいかな…

少しでも楽しんでいただければ、幸いです。
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