第17章 ゲーム・オーバー〔切原赤也〕
私の腕を掴む力が、少し強くなった。
暗くてよくわからないけれど、半歩前を歩く切原の横顔が赤いような、気がする。
通り抜ける風がさっきよりも涼しく感じるのは、そうか、私の頬もきっと熱いのだろう。
振り返った切原は、不安そうな、でも優しい眼差しで、私をまっすぐにとらえた。
そんな目で見ないでよ、期待しちゃうじゃないか。
「なあ、いいだろ?」
それはゲームでいえば、必殺技がクリーンヒットしたようなもので。
私はHPがゼロになって倒れ込んでしまう前に「…はい」という一言で、降伏を宣言した。
「お前意外とかわいいんだからさ…自覚持てよな。クラスの男に人気あんの、知らねーんだろ。ってか、テニス部の先輩もお前のこと知っててびびったぜ。部活中散々からかわれて大変だったんだからな」
「…いや、そんなことより、なんで一日中パシリみたいなことばっかりさせたのか聞かせてくれる?」
「……朝練で副部長に、浮わつきすぎてるってすげーどやされて…なんてーか、八つ当たりだった、かも。悪かった」
「やだ、許さない」
「えー! 頼むって!」
「じゃあ明日、一日私のパシリ」
「ぐ…」
「あ、嘘、明日祝日だった」
「よっしゃ!」
「じゃあ今。今ここで、キスして」
ゲームオーバーじゃなくて、リスタートを告げる口づけが落ちてくるまで、あと三秒。
fin
◎あとがき
お読みいただき、ありがとうございました!
手塚夢を更新したときのニュースで、次は忍足か丸井ですと宣言したくせに、まさかの赤也夢ですみません(悪いのは私で、赤也は決して悪くない)
忍足や丸井と違って妙に筆が乗って、二日間で一気に書き上げました。
いかがでしたでしょうか?
格ゲーには本当に詳しくなくて、スーファミ時代のスト2くらいしかやったことがないので、雰囲気で書いてしまいました。
そちら方面に明るい方、もし不自然だよっていう点があれば是非ご指摘くださいませ。