第5章 きみへ
「……お前は知らねぇと思うがな、俺はどうしようもなくお前が好きなんだよ。多分お前と初めてあった時からずっと。あいつが生きていて、お前が伊月じゃなかったときからずっとお前が好きだった。だから、そんな顔する必要ないんだ伊月。俺は……あいつとは違う。お前を置いてどこにも行かないから」
次々と口から言葉が溢れ出た。どう言えば、この臆病者の小さな愛しい吸血鬼に伝わるだろうか。
お前に避けられ続けたこの何日間、俺はお前のことで頭がいっぱいだったこと。他の奴らが喜ぶ成長を、俺は忌み嫌っていたこと。どんな奴が伊月を虜にしているのか気になって気になってしょうがなくて……そいつを脅す計画までたてていたこと。伊月が俺を置いてどこかへ行ってしまうことを想像しただけで…年甲斐もなく言いようもない不安が支配していたこと。12も年が離れていて、でもそれでも俺はお前に振り回されっぱなしで……でもどんなに怒っていてもお前が笑うだけで全てを許してしまうこと。どう言えば、全て伝わるだろう。
「………後藤さん……」
「伊月。俺はどうしようもなく…お前に惚れている」
俺はさらに強く抱きしめた。これでお前の中の不安が無くなるだろうか。伊月は震える手で抱きしめ返し、そして……
「…………………ぷっ」
………笑った。…はぁ!?!?!?
「お前、ここ笑う場面じゃないだろ!!!!」
伊月は爆笑して、俺の背中をばしばし叩いたのだ。そして散々笑い、そして俺と顔を合わせた。
「その言葉。出来ればあなたのお粗末なコレが入っていない状況でお聞きしたかったものですね」
…………あ……。俺は下を見て、顔をひきつらせた。……確かに。いや待て!!お粗末は余計じゃないか!?
「ほんっと!! 雰囲気もくそもありませんよね。さすが後藤さんです」
「うっ!!」
俺は返す言葉もなく、言葉を詰まらせた。伊月はゆっくりと俺のモノを抜きながら、立ち上がった。そして俺に笑いかけた。その顔はいつもの上から目線な…俺の好きな顔だった。
「さぁ、早く帰ってご飯にしましょ? 今日は気分がいいので、後藤さんのお好きな物にしてあげましょう」