第5章 きみへ
くちゅ くちゅ くちゃ くちゃ…
淫らな音を立てながら、体を上下に動かす伊月。紅く染まる頬に涙目の色気を感じさせるその姿に、俺は見とれた。さらに、久々に感じるその快楽に揺れ動かされそうになり、俺は伊月の頬にそっと手をやった。
「……ふっ……あっ……やぁっ…。…ごと…う……さ……」
久々に伊月と目が合い、甘い声で名前を呼ばれた時、俺ははっとした。気づいたのだ。伊月の体が震えていることに。
「ごと……さ……。ごとう……さん………」
苦しそうに俺の名前を呼ぶ伊月に。
「……やめろ」
「………え……」
俺がそう言うと、途端に伊月は泣きそうな顔になった。その顔は、信頼するあいつが死んだ時に伊月が見せた顔によく似ていた。………こんな顔、二度とさせないって決めてたのにな。
「あ………すみません。嫌ですよねごめんなさい。こんな汚い奴なんかと……したくない……ですよね。今降りますから……んっ!?」
今にも泣きそうな顔でそう言う伊月の顔を俺は引き寄せ、舌をねじ込んだ。伊月の温かく、なんとなく甘い唾液が口の中に入ってくる。久しぶりの味に俺は吸い付くようにさらに求めた。
「……ん……ふっ……くっ…」
最初は戸惑いを見せていた伊月だったが、徐々に俺に身をあずけていった。その姿がなんとも嗜虐心をくすぐられ、俺はさらに伊月の体を………
「って!!ちげぇ!」
俺は慌てて引き剥がした。危ねぇ……欲求がさらなる欲求を呼ぶところだった。伊月はそんな俺を見てぽかんとしていた。……そうじゃねぇだろ。いつものお前だったら、今頃殴ってるはずだろ。俺はぐっと堪えながら、伊月をぎゅっと抱きしめた。