第5章 きみへ
それからそいつは携帯で呼び出すようになった。その度に私はそいつに犯される。呼び出される場所は様々。ホテルだったり、そいつの別荘だったり。今回は近所から遠く離れた飲食店だった。
「やあ、伊月くん。こんにちは。」
私はお辞儀をする。そいつは端っこの席にいた。プライベート空間があるお店のようで、何を命令させるのか目に見えていた。
「………そのワンピースやっぱり君によく似合う。」
そいつは上から下までじっとりとした目で見てくる。
「パンツも指定のものをちゃんと履いてきたのかい?」
私は頷く。
「見せてみなさい」
……どこまで馬鹿な人なのだろう。
そうは思うけれど、どうやらこいつは私に惚れているようだった。施設のことも知っているようだし、利用する手はない。それに………後藤さんに言いに行く可能性もある。信用させる必要があるな。そのためには、気に食わないがこいつが好きなキャラになりきらなければ。
「………………こ、こんな…………人がいるところでですか?」
「大丈夫。しきりがあるし、誰も見ちゃいないよ」
恥ずかしそうに控え目にあげる………振りをする。
「…………ふむ。やはり君は白が良く似合う。」
そいつはにやにやと気持ちが悪い。あぁ、吐き気がする。
その後いろいろ悪趣味な要求を受け、軽く食事を済ませそのまま店を出た。
「美味しかったかい?」
「はい」
「次はここへ行こう」
来たのはショッピングモールの浴衣コーナー。
「いらっしゃいませ。」
「すみません。妹に似合う浴衣を探しに来たんですが。」
今度は兄妹設定らしい。
「それでは、これなんかどうでしょう。可愛い妹さんにぴったりです」
「これはいい。しちゃくさせてもらっても?」
「ええ。ではこちらへ。」
「ああ。着せるのはしますから大丈夫です」
そして手を引かれ試着コーナーへと。
言われるがままに服を脱ぐ。下着もだ。
「ここ、昨日つけた噛み跡残ってるね?」
耳もとで囁かれる。そして、浴衣に腕を通し、きせかえ人形となる。
「わぁー!よくお似合いでございます!」
「妹も気に入ったようです。これください。このまま祭りに行きますから。」
どうやら近くでお祭りがあるらしい。時計を見るといつも解放される時間帯をとうに越している。この時間だったら今頃夕ご飯を作っているころなのに。私は溜息をついた