第5章 きみへ
「本宮伊月…………まだあの時の生き残りがいたなんてね。」
そいつは私の手をつかんでにやりと笑う。
隣の体育館は大きい火で包まれていた。ちらりとそいつの隣の男達を見る。
「そう。火はこいつらにつけさせた。」
そいつ、百夜は笑う。
「君のことは知ってるよ。だからこうして退屈な講義に来てやったんじゃないか。君と話せて嬉しいよ。本宮伊月くん。」
「……………私に何の用ですか?」
「なーに。大人しくしてくれたら、別に何もしないよ。君の大切な後藤刑事にはね?」
…………………。
そいつはにやりと笑った。私の身辺調査はあらかた終わっているようだ。
「大変だったんだよ?君はなにぶん勘が鋭いし、元衛兵だから腕も立つ。バレないようにするには手こずったよ。君が伊月になる前の人達との関わりを絶っていて助かった。」
………………………。
「あぁ、そうそう。用だったね。君に仕事を頼みたいんだよ。簡単な殺しの仕事さ。」
……………断ったら後藤さんを殺すとでも言うのだろうか?
「断ったらそうだね。施設に君の存在をバラすというのはどうだろう?」
!!!!!!!!!!
蘇る実験の数々。
「施設では大変だったらしいね?頭をいじられたり、足や手を切られたり、目玉を取り出されたり……………」
「それ以上言わないで下さい。」
「それは失礼。」
「…あなたは何者?」
「私はあの施設の関係者。と言っても下っ端の下っ端ですけどね。ですが、貴方に会ったことはありますよ?覚えていませんか?」
……………覚えている。だからこそ悪寒がしたのだ。
「……………わかりました。その依頼引き受けましょう。」
まだ施設のあいつに知られていい時期じゃない。知られていいのは私が死ぬときだけ。
「貴方が賢くて助かりますよ。じゃあ、忠誠を誓ってもらわないと。」
百夜の下劣な顔を見て、やっぱりこうなるのかと思う。百夜は目をギラつかせながらベルトを外す。
「さあ、どうぞ。召し上がれ。」
そしてソレを私の目の前に持ってくる。私はソレを咥えた。吐き気を感じながら。
「……おっ。さっ、すがに上手だ。躾られてまっ……すね。あぁ、夢みたいだ。ずっと見てたんですよ。あの時あの場で貴方を。あぁっ!」
そいつは私の顔を掴み激しく動かした。そして口の中で果てたが、私の顔や服にかかった。私は畑に倒れ込んだ。