第3章 忘れないもの
ハクはあの後食事と着替えを用意してくれた
そして仕事があるからと部屋を出ようとする背中にあたしは声をかける
「ハク、あたし…今日から働きます。
あなたのお陰でとても気持ちが落ち着いたし働くなら少しでも早い方が良いと思うの。」
大丈夫
あたしならやれる
本当は少し不安だし怖いけど、でもそんな事言ってたらダメだ
あたしの言葉に目を丸くするハク
「焦らずとも明日から働けばいい。ここでの仕事は忙しく大変なのだよ?」
「あたしは大丈夫。それに、、助けてくれた湯婆婆さんにも悪いしちゃんと働いて恩返ししなくちゃ。」
「……………」
(、湯婆婆はそなたを…)
まっすぐハクを見つめるの瞳に迷いは無い
ハクはどうすればいいのかと頭を悩ませた
そんなハクには力強くもう一度言う
「ハク、あたし働けるよ。」
ちゃんと働きたい意思を伝えなくちゃ
ハクがチラッと目線をこちらに向ける
きっとダメだと言ってもきかないと思ったのだろう
「…そうか。そなたがそこまで言うのなら今日から仕事を与えよう。
まずは紹介が先だ、行くぞ。」
その言葉にパっと目の前が明るくなった
「心配してくれたのにゴメンね、でもありがとう。」
「いや、いいんだ。
それにそなたはわたしが想像していたような少女ではなさそうだね。」
「え?どういう意味?」
「とてもしっかりしている。本当は不安で堪らないであろうに…
きっとそなたは弱さを強さに変える力を持っているのだね。」
優しく笑うハクと視線がぶつかる
ーポンポン
頭を撫でてくれる手が暖かい
違うよハク、あなたの優しさがあたしに勇気をくれるんだよ
「さ、行こう。油屋の者へ紹介する。」
茶の間を出て長い廊下をハクと歩く
いよいよ始まるんだ
いつか記憶を取り戻す
絶対に……