第4章 特別な存在
千尋が去ってどれほどの時が経ったのだろうか
少しドジで危なっかしく、しかしまっすぐ一生懸命で心の優しい少女だった
この気持ちをなんと呼ぶのか、、
他人に興味など無かったわたしが彼女を見たとき何か特別な感情が頭を過った
きっとこの想いが恋なのだと悟ったんだ
しかし
千尋と話をするようになり、この想いが恋ではないと実感した
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「私ね、引っ越しする前の学校に凄く大好きな人がいたの。」
「大好き…わたしは千尋が大好きだよ。」
「ふふっ、その大好きは友達の大好きだよ。私もハク大好きだもん。
私が言ってるのは恋のこと…
恋をするとね?目が合うだけでドキドキしてつい逸らしちゃったり、そばにるだけで落ち着かないくらい緊張したり、、とにかく普通じゃ居られなくなって心を奪われちゃうの。
恋をするとその相手だけが特別になるんだよ。」
「恋…か。わたしは千尋に恋してるのだと思っていたよ。」
千尋はわたしにとって特別な子
それは遠い記憶の中にあったもので、ずっと昔に私たちは出会っていたから
『一度あった事は忘れない。思い出せないだけで。』
鮮明に蘇る記憶から、千尋に抱いた感情が恋ではないのだとわたしは理解した
わたしはまだ恋をするという感情を知らない
知りたいようなどうでもいいような…
でも、千尋が幸せそうに話す姿にわたしも少し羨ましいと感じたよ
いつか出会いたい
心を奪われてしまうほどの恋に
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ハクは丘に寝転び目を閉じる
千尋…そなたは今どうしてる?
わたしはまだあの頃と変わらずここにいるよ
リンは相変わらず口が悪いがよく働いて気が効くし、坊もすっかり成長して湯屋で少し働くようになった
みな変わらず元気でやっている
久しぶりに会いたい
そなたに話したい事があるんだ
千尋、わたしは初めて
『恋』をしたよ