第1章 恋愛至上主義者なんて、マゾヒスティックでしかない。
「じゃなくて、なんで??」
沙絵が話を戻すと、
クラスがなんだか静かになった、気がした。
『ん?ん―……ビビっ!てきたから?』
理由なんてなかった。
本当にそれだけだった。
「それだけ?」
……それだけ。
あの胡散臭い笑顔も、
一見爽やかそうにしている外見も、
言葉も………
全てが作られているであろうと感じていても、
それでも。
ビビって来たことが、
この人だって思ったことが、
今までなかったから、
だから、
一目惚れなんだと思った。
『嘘の塊っぽいけどね』
あははっと、声に出して笑うと、
「そう思ってるのに、なんでまた…」
沙絵が項垂れた。
「じゆ、本気か?」
翔悟の真面目な顔にその意図を知る。
『まぁ、相手は教師だけど、
全力で勝負してみるよ』
「そうか……」
少し、寂しそうな翔悟の顔を見て見ぬフリをした。