第1章 恋愛至上主義者なんて、マゾヒスティックでしかない。
階段を駆け上がり、
踊り場で方向転換。
「うわぁっ!?」
『きゃ?!』
ドンっという衝撃に尻餅をつく。
『いったぁ』
ぶつけたオデコがお尻よりも痛む。
「ご、ごめん。
大丈夫?」
差し出された手に視線を移し、
ゆっくり顔を上げる。
私のオデコとぶつかったであろう相手は、
顎を押さえていた。
『すみません』
その手をとり、
相手の力を借りて立ち上がる。
ふと並ぶと、
翔悟より少し高いことに気がついた。
「いや、俺もぼぉっとしてたし。
ごめんね?」
黒ぶちメガネをかけ、
真っ黒なゆるくカーブのかかった髪。
整った顔にスラッとしたモデルのような体型。
ただ、ひとつ気になったのが、
制服ではなく、私服だったこと。