第9章 再び
『か、影山くん…?』
「飛雄だ、飛雄って呼べ…」
声を塗り変える様に彼は耳元でそう囁いた。
その普段より低い声が、またしても私の耳の奥深くでそっと響く。
『と、とび…おくん』
慣れないせいなのか、ただ単に呼んだことがないだけだからなのか
彼の名前を呼ぶのが何故か恥ずかしくて途切れ途切れに小声で言ってしまう。
「で、どこ触られたんだ…口はやられてたよな?」
『まって…!』
止めようとしても、止まってくれるわけなんてなくてあの時と同じ場所で
あの時、触れることのなかった唇がゆっくりと重なった。