第9章 再び
『ちょっ、月島く…ん』
男の人の力になんて勝てるはずなんかないけど、こんな細身の彼になら少しは抵抗できるんじゃないかなんて考えた私が馬鹿だったみたいだ。
お昼休みに怯んでくれたのは、本当に奇跡だったのかなって思うくらいに思い知らされた。
「また考え事?本当に君は余裕だね」
『あっ…ちょっ…と!』
私の両手首を何ともないかの様に片手で掴んだ彼。
気づいた頃には私は身動きが取れなくなっていた。
『ち、近いよ…』
さっきよりも近くなった彼との距離。
意識したせいか急に恥ずかしくなり思わず顔を下に向けた。
「考え事なんてしてる君が悪いんでしょ」
『それは…っ!』
彼の空いたもう片方の手がこちらへと伸びてきたかと思えば、顎を軽く掴まれ上へと上げられる。
すぐに離れようとした時には、唇には何かに触れた感触が伝わってきた。
あぁ…まただ…
またあの時のように唇が重なってしまったんだ。