第1章 前編
「やだトランクスっ! やっぱ私の息子だけあってキレイねーー! お母さん嬉しいわ~」
「お兄ちゃん、ホント似合い過ぎ! そのままユメと二人で出かけたら絶対ナンパされるって!」
「ベジータにも見せたかったわ~。そうだっ、写真撮っておこうかしら♪」
「やめてください!!」
絶えられなくなって叫んだトランクスの姿は、今や、すごいことになっていた。
――あの後。
トランクスの化粧姿を発見したブラは、猛ダッシュで立ち去ったと思えばそのままブルマを連れてきた。
そして嫌がるトランクスの顔を見たブルマは目をキラキラと輝かせ、即、サイズの大きなワンピースと、かつらまで用意してしまったのだった。
……今やトランクスは、完璧に“女装”な姿になっていた。
「あとでパンちゃん遊びにくるから、その時までこのままでいてね! お兄ちゃん♪」
「いやだ! もう着替える!!」
「え~? 写真は?」
「母さん!! ……もうっ本当に着替えるんで、二人とも出てってください!」
そう言って、トランクスは母と妹を外に押し出し、今度こそドアをロックしてしまった。
「はぁ……全く。せっかくの休みなのに……」
と、無造作にかつらを外し、さっさと着替えていくトランクス。
元の格好に無事戻り、ドアを開けながらトランクスは言った。
「ユメ、お化粧落としてくるから、待ってて」
そして、トランクスは廊下に出ていってしまった。
「――何やってるんだろ、私。……トランクス困らせて」
残されたユメは小さくうずくまって呟いた。
トランクスの言うとおりだ。……せっかく、やっと逢えたのに……。
逢いたいって、ずっと思っていたのに……。
気がつけば、陽は随分と傾いてしまっていた。