第2章 後編
「あー、そうだ! ユメお姉ちゃん、そこにいるんでしょー?」
「いるよー? なぁに? パンちゃん」
ユメは声を上げてパンに応える。
「あのねー。いいこと教えてあげるー!」
「いいこと?」
首を傾げるユメと、なんだかまた嫌な予感のするトランクス。
「パンちゃん、お願いだから、もう変なことは……」
「トランクスねー! 宇宙船で、いっつも“ユメ~”って寝言言ってたよー!!」
「!!? ……パ、パンちゃーーん!!」
このままでは沸騰してしまうのではないかと思うほど真っ赤な顔で立ち上がり、絶叫するトランクス。
外ではキャー!という笑い声と、バタバタと走り去っていく足音。
「……」
トランクスの後ろで、同じく真っ赤になっているユメ。
その顔は嬉しさでだんだんと緩んでいく。
気まずいのだろう、背を向けたままのトランクスは小さい声で言う。
「その……“いっつも”っていうのは、多分嘘だとおも……っ」
言葉が途切れたのは、後ろからユメが強く抱きしめたから。
「トランクス、好き! だーい好き!!」
びっくりしたトランクスの顔が、優しい微笑みに変わって。
「オレも、ユメが好きだよ」
トランクスは自分の腰にあるユメの手を取って向き直り、その手の甲にそっと口づけた。
そして……、
今度こそ、唇へのキス。
それは、とても久し振りな感覚。
そこからじんわりと全身に広がっていくあたたかいもの。
優しかったキスがだんだんと深いものに変わっていく頃には、もう何も考えられなくなっていた……。
彼がいない間。
ずっと心配で。
ずっと寂しくて……。
でも、彼も同じように想っていてくれた。
それがわかっただけで、逢えなかった長い時間が埋まった気がした。
もう。離さないで。
ずっとそばに、いてね。
END.