第1章 前編
ユメは鼻歌を歌いながら、自分の化粧道具を使いトランクスの顔を作っていく。
「トランクスって顔キレイだから、絶対女装とか似合うって思ってたんだよね~」
「……」
目を閉じて力なく正座し、されるがままになっているトランクス。
そんな彼に、さっきとは打って変わって楽しそうなユメは淡い色の口紅を塗っていく。
「服は無いから。今日はお化粧だけね」
「……今日はって」
やっと口を開いてツッコミを入れたトランクスの声は、やっぱり弱々しかった。
そして。
「完成~~!」
嬉しそうに歓声を上げるユメ。
恐る恐るゆっくり目を開けるトランクス。
「ほら。すっごい美人!!」
トランクスは自分の目の前に用意された手鏡を見て、がっくりと頭を下げる。
「……まさか、またこんな……」
パンちゃんめ~……と真っ赤な顔でぶつぶつ呟いているトランクスを、ユメはじーっと見つめる。
「ん?」
「トランクス……本っ当にキレイなんだけど」
思わず感嘆のため息をもらしつつ、ユメ。
「っだぁ~~!! もう、彼女にそんなこと言われても全っ然嬉しくない!」
今日一番の大声を出したトランクスはそのままの勢いで立ち上がる。
「落としてくる」
「えぇ~? もったいない……」
「……」
ブーとむくれるユメを見下ろして、またがっくりと肩を落とすトランクス。
――その時だった。
シュッ。
「お兄ちゃん! ママがおやつ皆で一緒にどうっ……て……」
急に開いたドアに固まる二人。
それを見て……というより目の前に立つ兄の顔を見上げて、ブラも固まる。
……トランクスは真っ白になっていく頭の中で、ドアにロックを掛けていなかったことをすこぶる後悔した。