第1章 伝説の始まり
仄と女性が見つめあったまま横一線の会話を続けていると、突然大きな音がした。
何事かと音のした方を向くと、刀を持ってきた大男が手を合わせていた。
「それなら、死神になるってのはどうッスカ?」
「…死神?」
「そう、死神。僕らと同じ死神になったらどうっスカ?」
「いい考えですね。何もせず隊長のお世話になり続けるよりその方がずっといい。」
そう大男に賛同したのは女性の後ろから部屋に入ってきたあの青年だった。
「し、死神なんてなりたくない!!」
「では、その刀は返していただかなければなりませんね。」
「っ……なんで。」
「それは斬魄刀といって本来なら死神ではない者が持っていてはおかしいものです。死神にならずここを出ていくなら刀は置いていっていただかなければなりません。」
女性は静かに私の刀に目を向け言った。
「い、いやだ……。」
「では、死神になっていただくほかその刀を持つ方法はありませんね?」
そう言うと女性はニッコリと微笑んだ。
「では、元柳斎先生が建てられた死神統学院に…」
「編入という形になりますから…」
学のない私の知らない言葉ばかりが飛び交い話がどんどん進んでいく。
(私はこれからどうなるの? ……怖いよ…彼岸花。)
無意識に刀を抱きしめていた腕に力を込める。
すると、暖かい何かが私の中に流れ込んできて気持ちが落ち着く。
その熱に身を委ねると、突然3人がこちらを振り返った。
「今のは…」
「やはり…」
「これは放っておいたらヤバイっスネ…」
目の前の3人の大人は私を見て目を見合わせて呟いた。
「そう言えば君はなんていうんスカ?」
「ぇ?」
「名前ッス」
「名前……仄。」
名前なんてここ数年、聞かれることも無かったので何を聞かれているのかわからなかった。
「仄ッスカ。いい名前っすねぇ〜。僕は浦原喜助っす」
「浦原…さん。」
何時ぶりだろう、この子以外の名前を呼ぶのは。
清「そう言えば名前まだ言ってなかったですね。僕は山田清之介。こちらが…」
「卯ノ花烈よ。仄」
「卯ノ花…さん。清之助…。」
一気に3人もの人の名前を聞いたのは初めてだった。
流魂街にいた頃は名前を聞く前に殺さなければ、こちらが殺された。