第2章 動き出した歯車
十三番隊舎へ着く頃にはもう全体を通しての説明は終わってしまっていた。
ちくしょう、初日からやらかした。
ため息をつき人気のない廊下を見渡して進んでいると、廊下の角から白髪の長髪、隊長羽織を着た男が現れた。
「ん? ……もしかして、君が仄君か!!」
整った顔に笑顔を浮かべ、そう言った彼は私の脇に手を入れるとひょいと持ち上げた。
「いやぁ、あの小さな女の子が……すっかり見違えたよ。
あぁ、でも相変わらず可愛らしい顔をしているねぇ」
「ちょ、浮竹隊長!! わ、私はもう子供ではないんです!!
降ろして下さい!!!」
当時はよく色々な人に抱き上げられてたけど、今になってこの対応をされるとは予想外だ。
もしかして、ほかの隊長の方もこんな反応をするんだろうか……。
「あぁ、すまない。つい君の成長が嬉しくなってしまってなぁ」
そう言って謝っているが、顔がまだにやけている浮竹隊長に促され、私は隊長室に案内された。
「まったく……。
本日より配属となりました、仄です。本日より十三番隊でお世話となります」
「そんなに畏まる必要はないよ。隊長といっても持病を抱えてる分、あまり表には出ないからな。
いやぁ威厳がなくてすまないね!!
それより、ここに来るまで大変だったみたいだな」
「へ? ご存知なんですか?」
なんと耳の早い。
「ハハハ、あの更木剣八とやり合ってのした女の新人が居る。って話題だよ」
「そ、そんなにすごい方だったんですか……」
「そりゃねぇ。
彼は更木剣八。入隊試験を受けず、前十一番隊隊長を決闘で殺害して、いきなり隊長の地位に就いた実力者だ。剣八の事は知っているだろう?」
「彼が……剣八」
代々最強の死神に与えられる称号、それが「剣八」。意味は、幾度切り殺されても絶対に倒れない者を指す。
更木ってことは80区出身って事だよね……どおりで、私と同じ匂いのするわけだ。
「まぁ、彼は十一番隊だからなかなか会うことはないと思うけど、目をつけられたなら気をつけるんだよ?」
「はい、ありがとうございます。
それでは、浮竹隊長?」
「ん? どうした……」
「半年ぶりの『検診』のお時間です♪」
「そ、その笑顔は、、本当に検診だけなのかな??」
「何を言いますか。私はその為にここに配属されたんですよ?」