第2章 動き出した歯車
卯ノ花隊長はファイルから浮竹隊長のカルテ取り出すと私に手渡した。
受け取り中を確認した私は溜息を付いた。
「最後の定期健診が半年前って……」
「何かと理由を付けてずっと断られ続けています。
向こうへ付いたら何がなんでも隊長の健診を」
浮竹隊長は生れつき病弱で幼い頃、肺を患いそれが原因で髪の色が白く変色してしまっている。
しかし、隊長格の中でも霊圧量が飛び抜けて高くその実力は折り紙付き。
これほどの実利者を病ごときで失っては護廷十三隊の大損害。
これは責任重大な立場になってしまった。
「承りました。
では早速、十三隊の方へ行ってきます。
終わり次第こちらへカルテの写しを持ってきますので……」
改めて自分の立場を確認し気を引き締めると、カルテから卯ノ花隊長へ視線を移す、そこには優しい眼差しでこちらを見る隊長がいた。
覚えのある眼差しに咄嗟に泣き出しそうになる。
この感情の正体が何なのか私には分からない。
けど、
あの血に塗れた日々の中で無意識に求めていた温もりをくれたこの人に
私は何を返せるんだろう。
そんなことを考えているとノックの音と共に清之助が部屋に入ってきた。
「失礼しま……って何見つめ合ってるんですか?」
書類の山を抱えた清之助は私たちを不思議そうに見つめていた。
「っよいしょっと。
隊長、新入隊の名簿ここに置いておきますねっと。
というか、仄はまだこんな所にいていいんですか?」
「へ?」
「だって、君は十三番隊に配属になったんだから向こうで業務の説明を……」
そう言って怪訝そうに私を見つめる清之助に隊長が返す。
「仄には四番隊からの派遣と言う体で十三番隊へ行き、浮竹隊長の専属になってもらいます。
話も通っていますから大丈夫でしょう」
「浮竹隊長の専属ですか……。
仄、責任重大だぞ」
「分かっています。
浮竹隊長の以前の担当はどなたですか?
お話を聞いて行かなくては……」
「以前は勇音が担当していたはずです。
勇音に確認をとってから十三番隊へ向かってください」
清之助の心配そうな声にムッとしつつ、失礼しますと言って部屋を後にした。
道中病室を覗くと、頭に血が上っているのか周囲を威嚇しまくっている隊員を勇音と男性隊士が、なんとか押しとどめようと奮闘していた。