第1章 伝説の始まり
連絡を終え戻ってきた碓氷班長は、すっかり回復し静かに寝息を立てている2人をみて私達に詰め寄ってきた。
何があった。と問われるもなんとも答えることが出来ず、俯く私を見かね海燕が口を開いた。
「嬢ちゃんは学院に入る前、四番隊で世話んなってたみたいでな。
治癒に霊力を回せるみたいだから頼んで治してもらったんだ。」
海燕さんの言葉に渋々納得した碓氷班長は連れてきた救護担当の隊員を私たちに任せ、教員の方への報告に駆けていった。
それから1週間後、試験結果を知らされた。
被害の大きさから考え不合格を覚悟していたが、結果は合格だった。
「臨機応変な対応が評価された」と担任から説明を受けたが納得いかず、モヤモヤもした感情を抱えていた。
毛野先輩は腕の腱を切られ刀が握れなくなった。
白馬先輩は学院を辞めてしまった。
救えたはずの未来を思うと気が重くなり、息をすることすら苦しくなった。
塞ぎ込む私にその場で卒業が学院長より言い渡される。
『なぜですか?』
そんな問が口から漏れ出そうになった。
答えは決まっている、『君は危険だから』それに尽きるはずだ。
誤魔化すような説明を受けた後、会議室の前を通ると教官達の話し声が聞こえてきた。
『情報を見る限り、一班の担当していた地区に虚が集中していた』
『より強い霊力に寄せられたのか?』
『しかし、あの学年に特別強い霊力の者はいなかったはず……』
『いや、あの班にはイレギュラーがいた。』
『あの編入生か……』
その後私を擁護する言葉が聞こえた気がしたが、気がつくと私は部屋のベッドで蹲っていた。
その後行われた式典への私の参加は認められず、半ば追い出されるように私は学院を卒業した。