第1章 伝説の始まり
私達が影の降りた場所に着くと、血を流した仁山先輩が翼を畳んだ虚の足元に転がっていた。
「っ違う!!」
私が見た時は四足の虚だった。
私の叫びを聞いて海燕さんが浅太刀を構えた。
「……なるほど。つまり、奴さんは新手ってわけか。」
「っ新手とはどういうことだ!!」
遅れてやってきた碓氷班長は海燕さんの言葉に目を見開いた。
「ここは現世ですよ? 無尽蔵に虚は沸いて出ます。」
そう無表情に返した私に碓氷班長は「しかし、監督の死神がいたはずだ!!」と声を荒らげた。
「ソレハコイツノコトカァ? 」
と、口から青菜さんを吐き出した虚の姿に私は『いつもの自分』を忘れてしまった。
「青菜十五席!!」
そう呼びかける海燕さんになんの反応も示さない青菜さん。
あぁ、私の『大切な人』の『大切な人』が……………
…………「許さない」
刀を抜いた私は一息に虚に近づくと目玉に刀を突き立てた。
「ア、ギヤァァァァァァァァァ!!!!!!
イタイイタイイタイイタイ!!!!!!!!」
のたうち回る虚から刀を抜き、私は一瞬のうちに切り伏せる。
「ア、アアア………??」
虚が灰になり消える刹那、私は呟いた。
私の大切を奪うやつは……
「死を持って償え………」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
虚が一瞬のうちに灰となって消えた。
舞い上がった灰の中に立つ少女は黒い髪を靡かせ、こちらに戻ってきた。
「意識は?」
「どちらもない。これはもう……」
手遅れだ。俺がそう答えると碓氷も、「他の部隊に報告する」と言って少し離れた場所で天挺空羅を行い他の部隊に報告をしていた。
「まだ、助かる……」
そういった彼女に正気か。と尋ねると「私ならできる」と答えた。
「だが、一体どうやって……」
尸魂界ならば霊力が満ちているので、まだ可能性があった。
しかしここは現世。
向こうとは勝手が違う。
何よりこの街自体の霊力も薄く、少し息苦しく感じるほどだ。
「………この事は、黙っていてください」
彼女はそう言って刀を抜いた。
何をするつもりだ、と問おうとすると
「運べ彼岸花」
彼女の言葉と共に舞い上がった真っ赤な花弁。
その始解はあまりにも美しく。
あまりにも危険な力だった。