第1章 伝説の始まり
虚は私に向けて発達した腕を振り下ろす。
「縛道の八 斥」
しかしその攻撃が、私に当たることは無いかった。
「チィ、ウマクウケタヨウダナァ」
弾かれた腕をを見つめ、虚はそう言ってニヤニヤと笑う。
「そう? 褒めてくれてありがとう。じゃあ次は私の番ね?」
虚の額に向け人差し指を向け唱えた。
「破道の四 白雷」
指先から真っ直ぐに伸びた白い光が虚の額を撃ち抜いた。
「ア、アアア………?」
前のめりに倒れた虚は何が起こったのか理解できていないのか、目玉をギョロギョロと動かしこちらを見ていた。
「何が起きたのか分からないみたいだけど、貴方が知らなくてもなんの問題もない」
私の言葉に目を見開いた後、目を細めた虚へ私は別れの言葉を口にした。
「さようなら。
破道の一 衝」
私の言葉に対し何かを呟きその嘘は静かに私の鬼道を受け灰になった。
'死の女王 モエルティレイナ'
振り返ると座り込んだ白馬先輩の隣に海燕さんと碓氷班長が立っていた。
「ひ、一桁の破道で……虚を…………」
「君は……一体何者なんだ…」
怯えきった白馬先輩。
私を睨みつけ今にも斬りかかりそうなほどの殺気を放つ碓氷班長。
そして……
「………」
何も言わずにただ私を見つめる海燕さん。
まるで私が化け物みたいな扱いだ……。
灰になって消えた虚は私を『死の女王』と呼んだ。
草鹿で1人死体の上に立ち、生にしがみついて生きてきた私は……
私は一体なんなのだろうか……
「っ……答えるんだ!! 君は、本当にただの生徒なのか?」
何も言わない私に碓氷班長はそう声を荒らげた。
「私は……」
なんと答えたらいいのか分からず、俯いた私をさらに追随しようとした碓氷班長は目の前に墜落した羊間先輩の姿に言葉を失った。
「っ毛野!!!」
私と海燕さんはその声と同時に空を見上げ影に向かい走る。
「羊間先輩は仁山先輩の所に応援に行っていたんですよね?」
「あぁ、君のところに来る前に見かけて毛野が応援に向かった。」