第1章 伝説の始まり
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今まで幾度となく襲われてきた少女だが、それは'人に'であってこんな…
「…こんな化け物は初めてなんだけど。」
目の前には仮面をつけた大きな化け物。
『ホゥ、ワレガミエルカコムスメ。』
その化物が前足をこちらに向けると、触手の様なものが襲いかかってきた。
「クッ…」
背中に背負った刀を抜く暇もなく、鞘に入ったまま触手を防いでいくが、非力な子供では太刀打ちできるはずもない。
「クッ…あっ!!」
刀が弾かれ触手に捕らえられる。
「ウッ……ウゥ…っあぁ…」
『ナンダモウオワリカ?』
締め上げられ、呼吸も出来なくなっていく。
(あぁ、死ぬのか…)
『マァ、ソコソコタノシメタカ…』
「あ、あぁ…」
『コムスメヨロコベ、オマエハオレノチトナリニクトナルノダカラ』
(あぁ、死にたくない。もっと…もっと…私が)
「強ければ…」
頬を一筋の涙が伝ったかと思っうと、少女を締めあげていた触手が消えた。
「…え?」
化け物に視線を移すと真っ二つに避けていて、そちらも何が起きたか分かって居ないようだった。
ふとわれに帰り、自身が今落ちていると分かると少女は身を固くし受けるはずの衝撃を覚悟した。
「…清之介。」
「はい。」
しかし、あるはずの痛みは来ず代わりに柔らかい感触に包まれた。
「え?」
「…大丈夫ですか?」
「は、はい。」
「清之介、行きますよ。」
「…もう終わったんですか?」
「えぇ、元々それほどのものでもありませんでしたし。」
自分を受け止めた青年と、あの化け物を倒したと思われる美しい女性の会話を呆然と聞いていた。
「あなた…」
「っ!!」
突然伸びてきた女性の手に驚き、怯えてしまった。
少女にとって'それ'は自分を傷つけるものでしかなかったのだから仕方がない。
そんな少女に怒るでも、気を悪くした様子も無く微笑み女性は少女の刀の方に歩いていった。
「…清之介、この子を瀞霊廷に連れてきてくれますか?」
「え!? あ、はい。」
「これ、あなたの刀ですか?」
「は、はい…。」
「少々お借りしますね?」
そう言ってニッコリと笑うと少女の刀を持って女性は消えてしまった。
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