第1章 伝説の始まり
北流魂街79地区『草鹿』…
「あれ、あたしなんでここにいるんだっけ…」
少女は血に濡れた両手を眺めながら考える。
目の前には襲いかかってきた男達の屍の山。
東西南北の4つの地区に別れるそこは、各区域80地区に分けられており、地区の数が大きくなるほど治安が悪い。
本来、79などと言う地区で子供が1人で生きられるはずがない。
だが、少女はそこで1人で生きていた。
ボロボロの着物とも言えない布切れを纏い、血に濡れた頬を手の甲で擦った。
齢12程の見た目にも関わらず、落ち着いた雰囲気を持った彼女は幾度となく考えた疑問をまた頭の中で広げていた。
「なんでだっけ…何かに押されてトラックに跳ねられて…気が付いたらここにいて……わかんないからもういいや。」
屍の山に背を向け少女は歩き出す。
行く宛もないが、ここにいるわけには行かない。
こちらに来てすぐに手にした刀を背に背負い、少女はまた宛もなく歩き出した。