第2章 偶然
ー太宰sideー
先日、私は仕事を終えて帰宅している途中で、元相棒の姿を発見した。
「中也、何してるの?」
「太宰…仕事中だ、話しかけてくんじゃねえ…忙しいんだよ!!」
一枚の写真を持って、辺りを見渡しているところから察するに、誰かを探しているのだろう。
「せっかく話しかけてあげたのにつれないねえ…。じゃあまたね、ちびっこマフィアくん。」
「ああ!?てめえ…あっ!」
その時、強い風が吹いた。
中也はそのへんちくりんな帽子を飛ばされないように押さえたせいで、捜査に必要な写真が、飛ばされてしまった。
運よく、その写真はカサカサと音をたてて、私の足もとに引っ掛かり、遠くへ吹き飛ばされずにすんだ。
その写真を、中也に渡すために拾い上げた私は、たまたま、その写真に写っている人物を見てしまった。
「おおお、こんな美人を捜索してるだなんて、羨ましいねえ。」
「手前、今見たな、忘れろ、記憶消せ!!」
「いいじゃないか。」
じゃあ、と私は手を振って、その場を立ち去った。