第4章 私
しばらくして、話し声が近づいてきた。
太宰さんと、他の、誰かわからない人たち…
ガチャリと扉が開いて、太宰さんがドアから顔だけをひょっこり出して言う。
「君が起きたって言ったら、是非ともお話したいって言うこと聞いてくれないから連れてきちゃった。入れてもいい?」
私が同意の意味をこめてコクりとうなずくと、3人の人が入ってきた。
男の人ばかり3人。
銀色の髪の、私と年の近そうな男の子と、背の高くて眼鏡をかけた、ちょっと怖そうな人。もう一人の人はラムネを飲みながら部屋に入ってきた。
ラムネの人が私を見るなり、おー!と歓声をあげる。
「聞いた通りの美人さんだ!!早く仕事を終わらせてかえってきた甲斐があったよ!!」
太宰さんが得意そうな笑みを浮かべながら言う。
「そうでしょう?ね、国木田君♪」
国木田と呼ばれた人は不機嫌そうに言う。
「太宰、俺は美人さんと話したいなどと一言も口にしてないぞ!」
「またまたそういうこと言って~☆あの女はまだ起きんのか、あの女の具合はどうなんだって毎日毎日しつこく聞いてきたのは国木田君でしょー?」
なんだか…楽しそうな人達だ。太宰さんってこういう、お茶目な顔をする人なんだな、と思った。さっきまでシリアスな話をしていたから私も人の顔なんて見る余裕がなかった。
よく見ると太宰さんって…
あれ、ものすごい端正な顔立ちをしているんじゃ…。
「この人たちは…?」
「ああ、ここで働いている人たちだよ。怪我が治るまではここでいてもらうから名前を覚えてもらおうと思って…それに今からする話はこの人たちにも知っておいて欲しいことだけど、少し込み入ってて全部話すのは私が疲れるからね。」
なるほど、いっぺんに済ませたいわけだ。
これから話すこととは私のことで間違いないだろう。でもそんなに込み入っているなんて私は何をしていた人だったのだろう。
期待と不安とが入り交じった変な気分になった。